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2018年10月アーカイブ

三木裕和先生講演会2 なんとかなるという思い

隠岐養護学校長

赤山克司

 仕事が人を豊かにするモノとなっているか。その最も基本的な問いかけに応えていくための本校の取組はどのようなものなのか。三木先生の講演の後半部分をもとに記していきます。

 これまでも記してきましたが、本校の中学部・高等部に入学してくる生徒の中には、授業や行事などに参加しにくい生徒がいます。事情は様々なのでしょうが、失敗するのが怖いため、活動自体を行わないのではないかと推測される場合が多くあります。

 そのような生徒に対しては、「成功体験を積み重ねること」、「ほめる」ことが重視されてきています。

 三木先生は、「ほめること」が生徒の意欲を必ず引き出すわけではないことを、スキーで転んだ生徒に対して「上手にころんだね。」が効果的かという例で説明され、ほめることを重視する指導に対して見直しの必要性を語られました。

 また、成功体験をスモールステップのように積み重ねるという考え方が現実的なのかとも問いかけられました。

 では、どうすれば良いのでしょうか。はやり生徒が活動を通じて達成感が感じられ、自分もなかなかやるじゃないかという感覚が持てる、そんな学習や体験が大切であるということに戻っていきます。

 三木先生は「リアルな目標ができて、自分の行動への手応えがあり、目標と結果のずれを認識して、もっといいものを作りたい。」と思える活動が必要だと説明されました。

 そのイメージを聞く者がしっかりもてるよう、近江学園で陶芸に打ち込むことで、生活を一変させた青年のこと。同じく陶芸をきっかけに攻撃的な態度から脱却した高等部生のことが語られたと受けとめています。糸賀氏がめざした「ものづくり」、「人間づくり」となっている実例でもあります。

 では、どんな活動が生徒の豊かさを引き出すのかという疑問がでてきます。教員の提案によるものでよいのか。生徒が求めたものでないと効果的ではないのかということです。

 それに対しては、どちらがよいということではないこと、授業作り、活動作りが教員の最も大切な部分であることを改めて確認されました。この部分は、その学校、その地域にもとづいて本校の教員が力を注ぐところですので、「考えなさい」と念を押されたと聞きました。

 講演の終わり頃、活動を通じて生徒が「なんとかなる」という感覚を持つことが大切であると説明され、自らが校長をされている学校の専攻科の修学旅行でのできごとを紹介されました。

 専攻科生らが自分たちで宿をとり、夕食場所も決め、その場所へはコンビニをめざせばよいということを決めてでかけたところ、都会にはコンビニが多数あり迷いに迷って、夕食会場に行き着くまで1時間半かかったそうです。帰校した専攻科生に「どうだった?」と問うたところ「なんとかなりました」と応えたというできごとです。

よく引率の教員が途中で声をかけず1時間半つきあったものだとは思いますが、そこが重要なのでしょう。

 やはり「まかせる」「待つ」がないと、自主的な活動にはできません。同じことを行っても教員が細かに手をいれ、ほめるというコントロールを通じて行っていては、「なんとかなる」という将来への見通しはもてません。活動内容は大切ですが、教員の関わりがもっと大切。そんな受けとめをしました。

 最後の最後に、障がいのある園児に関わることで、生活を立て直しいった学生の話がありました。人とつながる学習・仕事が人を再生させる。目頭が熱くなりました。

 生徒がマンネリにならない、生徒がもう少しやってみようという活動づくり。その基本を大切に、行事が続く年度後半の取組を行います。

三木裕和先生講演会1 働くこと

 隠岐養護学校長

赤山克司

 今年も鳥取大学地域学部の三木裕和先生を招いて講演会を行いました。

 テーマは、「障害のある子どもを発達の主体にーできなさの中の人間的営み」でした。

 講演の前半は、鳥取大学大学院生が行った、一般就労を継続している付属養護学校卒業生へのインタビューを元にした研究成果と、日本初の障害児入所施設近江学園の創始者糸賀一雄氏の働くことについての考えかたを紹介しながら、「働く」ことの目的について話されました。

 大学院生の研究は、一般就労を継続中で、保護者・雇用主らが問題を感じていない卒業生を対象として行われました。研究を開始した時点では、働くことについての悩みや苦しみはなく、余暇活動が課題であるとの仮説をもっておられたそうです。

 しかし、インタビューをしてみると、「一日中シュレッダー」「仕事はご飯の盛り付けのみ」など変化のない仕事に悩み、仕事場の人と関係が作りづらいという困り感が語られ、就労=成功となっていないという結果であったそうです。

 講演の中で、三木先生は知的障がいがある人の傾向としてよく言われている「決められた仕事を、根気強くやり続けることができる」ということについて、それを「都市伝説」と評されました。そして、変化のない仕事、関係が作れない仕事場で苦しんでいる状態が放置されているのは、現代の働くことのとらえ方が競争的になっており、生活の豊かさにつながるものになっていないという仕事の在り方の課題を指摘されました。

 その流れから、1946年私財を投じて近江学園を立ち上げた糸賀一雄氏が、働くことをどのように捉えていたかに移られました。

 糸賀氏は労働が「ものをつくる」、「人間をつくること」、「喜びと自信」につながることを重視されたそうです。

 大学院生の研究は、一般就労を継続している卒業生が日々取り組んでいる仕事は、「人間をつくること」「喜びと自信」を残念ながら生み出していないといわざるをえません。

 なぜそうなるのかを、考える必要があります。企業の姿勢に課題があるのかもしれませんが、本校のような特別支援学校が企業に就労を働きかける際の説明に実は課題があるのではないかと考えています。

 我々は企業に対して、三木先生が都市伝説と評した「決められた仕事を継続できる」的な説明をしてはいないか。その説明が企業の視野を狭めているのではないか。そんな思いがわいてきました。

 どう企業に説明していくか、就労した卒業生をどう支援していくか。単に就労させて成功ではないという基本的な問題を提起された講演前半でした。

 では、学校で、どのような関わりで、どのような力をつけていけばよいのか。その点については、次回とします。

修学旅行2 キッザニア 生徒がなんとかするということ

隠岐養護学校長

赤山克司

 修学旅行では、生徒が楽しめるように、事前準備をし、現地では生徒の疲れ具合を見ながら、活動の調整を行ってくことは、前回も書いたところです。

 生徒と相談して決めた活動が、波乱なく、無理もなくやり遂げていくことは、生徒にとっても、引率する教員にとっても、安心感があるものです。

 でも、それだけでは、日常生活とは異なった場所にわざわざ出かけ、初対面の人やモノに接する価値が薄いように思います。意図しなかったできごとにどう対処するか。そんなどきどき感を期待できるのも、ある程度のことには対処できる少人数の旅行ならではのことだと考えます。

 今回、一人の生徒はUSJ,もう一人はキッザニアを自主研修の場として選びました。私は、キッザニアに同行しましたので、そこでのことを報告してみます。

 キッザニアとは、3才から15才までの子どもが、お菓子づくりや車の整備、新聞作りや冷凍食品作りなどの多様な職業体験ができる場です。一つの活動は30分程度。その活動には保護者・大人は参加せず、ガラス越しに活動を見ることになっています。

 生徒は、事前学習で「お菓子づくり」(ハイチューを作ります)、「花時計」(2階に設置された大きな時計の下で、ダンスを踊ります)を選択し、それぞれ体験することができました。キッザニアでの滞在時間は6時間。二つ以外にも、宅配便、印刷体験、英語での台詞入れなどを次々と行いました。

 キッザニアの職員の的確な指示、支援が素晴らしいの一言です。生徒が全く混乱していない。

 体験した活動に牛乳工場(チーズケーキを作る)がありました。4種類のクリームから一つ選び、5種類ほどのトッピングを自分の好きなような配置して、新しいケーキを開発するというものなのですが、完成時の仕上げの仕事が「ケーキの名前をつけましょう」でした。

 授業で、読み書きは練習していますが、この仕事の意味にそった活動ができるか。引率の教員がどきどきした時間でした。その結果が、下の写真です。ケーキは「なかよし」と名付けられていました。

nakayasi.png

 生徒の瞬発力が遺憾なく発揮された場面でした。この生徒のよくいう言葉で言うと「Good Job」。

 安心感のある活動の中に、背伸びする活動を意図的に入れていく必要性を改めて感じました。日々の活動の支援はどうしようか?そんな宿題をもらって帰りました。

中学部修学旅行1 選択できる楽しさ

 隠岐養護学校長

 赤山克司

 中学部の修学旅行に同行しました。

 楽しい旅行にするためには、どうしたらよいか。街を歩くだけで楽しいと思える時もありますが、大勢の人、大量に並ぶ商品や宣伝のための多彩なディスプレーなど、日頃接することがない大量の情報に包まれ続けると、疲れて何も意識できない状態になってしまいます。ですから、事前に目的の整理が必要となります。

 いずれの学校でも修学旅行の目的は、日頃経験できないことを楽しみながら学ぶことではないでしょうか。私は、学ぶ内容には二種類あると考えています。

 一つは、自動改札の利用の仕方、ホテルの鍵の管理の仕方など旅行に必要なこと。二つ目は、多くの選択肢の中から、自分が楽しめるものを選択することです。

 今回も、事前学習で、何に注意を払えばよいのか、何を自分で決めるのかの見通しをもち、出発しています。    

 旅行に出かけて、覚えて使いこなせるようになることも楽しい。選んで自分の想像どおりであったら楽しい。ただ、選択には、あっちの方がよかったという後悔や、予想と違ったという残念な思いがつきまといます。選択には、楽しさだけではない、様々な思いを引き出してくれる味わい深さがあります。

 5名という少人数でしたので、各種施設への入場予定時間以外の現地での行動は、その時その時の生徒の疲れ具合や、人混みなどを見ながら決めることのできる、融通の利く旅行にできます。生徒の選択の機会を、様子を見ながら作れるわけです。

 道頓堀や天保山で何を食べるか、だれにどんなお土産を買うか、USJで何を体験するか。平素決めることが苦手な生徒は、数多くの選択を繰り返して修学旅行を楽しめたのではないかと感じています。

 ただ、何かを決めることが楽しくなくなっているかなと、感じるときが、ままありました。そのような時には、やはり疲れている様子でした。興味関心を持ち続けるためには、体力も必要だと改めて感じたところです。

進路研修会の最後に

 隠岐養護学校長

 赤山克司

 高等部卒業後の働く・生活する場を、本人、保護者の意見を踏まえながら確保していくことは特別支援学校の重要な役割です。

 研修の終わりにあたって、従来から卒業後の仕事・生活に着目して取り組んでいた特別支援学校において、キャリア教育をどのように考えていけばよいのかということについて話したいと思います。

 小中高でのキャリア教育を始めるに当たって、4領域8能力など必要とされる力の分析がなされ、各学校・地域での実情に応じて育成する目標を設定し取り組むことの重要性が唱えられました。

 子どもたちの現在の状況を理解するためには、分析する視点が必要ですので、「コミュニケーション能力」「自己管理能力」等という能力の提示は意義あることと考えます。

 ただ、分析された個々の能力に着目して、この授業はAの能力、次の授業はBの能力の育成を目指しますという実践は、木を見て森を見ずということに陥る危うさがつきまといます。

 学校は、1年2年と学年をおって学習内容を積み上げていく組織です。そのため、様々な技能・能力を、階段を上るように積み上げていこうとする考え方をもちがちです。また、階段の最上部に「目標」「夢」を置くと、生徒はそこに向かって頑張ってくれるのではないという考え方も根強い気がします。

 ステップをへて成長することは確かなので、そこを否定するつもりありません。

 しかし、この階段イメージを持ち続けると、目標を定めないと階段を登り始められないのではないかとか、もっとよい階段があるのではないかという いわゆる自分探しがはじまってしまいます。

 自分がやりたい、やり続けたいことは、目の前のことを一生懸命にやりつづけ、あたかも数珠つなぎのように活動の連続を作っていくことで結果的に見つかるものではないでしょうか。

 どんな職業がいいのだろうかと考える時間も大切ではありますが、体験をして、その体験をどれだけ自分のものとできるかという点に力点をおいた活動の方が、将来に結びつくのではないか。新しいこと対する不安感の強い本校生徒にとっては、特にそうだと私は考えています。

 そのように思うようになったのが、ジョブズのスピーチに触れてからです。そのスピーチの一説を引用します。

 ジョブズのスピーチの一節 2005年6月スタンフォード大学卒業式

日本語訳 松原耕二 「ぼくは見ていこう」2010.3.3 「ほぼ日刊イトイ新聞」より

  点と点を将来に向けてつなげていくことはできない。

  できるのは過去を振り返ってつなげることだけだ。

  だから今はただの点であっても、

  将来は何らかの形でつながっていくと

  信じなければならない

 目の前のことをどれだけ工夫して、取り組めるか。その子どもたちの取組を、我々がどれだけ評価し、子どもたちの営みを後押しすることができるか。子どもたちの活動の場をどのように作っていくか。そのことに着目していただきたいと考えています。

生徒どおしがなれ合わないこと

平成30年10月5日 中四国知的障がい学校PTA研究協議会に参加しました。

会場は、鳥取県立米子養護学校。10:30~12:00の間、ほぼすべての授業を公開していただきました。

広い校舎内を見て回る中で、高等部職業コースの生徒が手作りのパンとコーヒーを販売する「火木カフェ」に感銘を受けてました。

IMG_3868.jpgコーヒー・ビザパンともに100円。おいしい!!

 写真のように、メニューなども工夫され、街場にある店舗と遜色ないしつらいとなっています。生徒の接客も丁寧、誠実であり好感がもてるものでした。

 でも、一番感心したのは、開店前に行われていた朝礼の整然とした雰囲気でした。リーダー役の生徒が4名の接客担当生徒の前に立ち「おはようございます」「しばらくお待ちください」など接客に必要な挨拶練習をリードし、本日注意するべきことを説明していました。言葉づかいがしっかりしており、なれあうところがありませんでした。

 友達どおしくだけた口調で話をするよさもありますが、チームとして活動をするためには、生徒間でもきちんとした言葉遣いをし、それをしっかり受け止める雰囲気が必要だと考えます。しかしながら、この雰囲気は、高校生でもなかなか作り上げることができにくいものだと考えています。

 一生懸命することに対する照れとでもいうような感情が出てしまい、話す方も聞く方もなんとなく、かるいふざけのような言動をしてしまう。大切なことを言っているし、聞いてはいるのだけれど、お互いに伝わり合えていない不完全感が、なれあいがある場には生まれています。そのような場を活動のスタートにすると、確認不足からのミスが生まれ、ミスしたときにも、「十分に確認できていなかったから」という言い訳を許してしまう危険性があります。

 活動のスタートを毅然と行うことの大切さを、改めて教えてくれた朝礼風景でした。

 わきあいあいとした本校の生徒のよさに、なれあわず、しっかり話し、しっかり聞く時間を組み込んでいきたいと考えています。

 

隠岐いぐり凧

 本校内には、3点の隠岐いぐり凧が展示されています。

 いぐり凧は隠岐独自の凧で、周囲の10個の突起、風をうけて音を生み出す背面の蔓などが特徴と言われています。

 隠岐では、保存会が凧の継承・普及に努められており、毎年4月、前年に生まれたお子さんの名前を書いた凧などをあげておられます

 IMG_3825.jpgIMG_3827.jpg

 上の凧は保存会の方からいただいたもので、裏側をみると、おおよその構造がおわかりになると思います。作成するには、竹ひごを作るところから始まり、骨格づくり、絵の作成等一連の作業が必要です。

 本校でも、保存会のご協力を得て、この伝統的な凧作りを授業で取り組み、男子生徒2名がそれぞれ1点の凧を仕上げることができました。

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鯛と鶴が描かれたこの凧は、玄関横の階段に掲げてありますので、機会がありましたらご覧ください。

岬町の畑 ネギ順調

 高等部の生徒が増加したことと、道路拡張工事により本校敷地内の畑が手狭になったことにより、校外に農地を確保することとなりました。

 ありがたいことに、地域の方より農地を借り受けることができ、本格的に野菜作りにとりくむことができています。

 9月30日 隠岐においても台風24号による強風が発生し、せっかくお貸しいただいている畑の農作物は大丈夫かと心配になり、畑の様子を確認してきました。写真は、台風が通り過ぎた10月1日の畑の様子です。

IMG_3813.jpg台風の影響もなくネギは順調です。

IMG_3812.jpg手前からネギ、白菜、さつま芋です。ここまでをお借りしています。

一番奥のやや白く見えるのは、そばの花。これも無事でした。